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海洋冒険小説の家

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(9)海龍丸発見!

    (9)

 信長殿は書状になんでも書いて、筑前守殿に送っているんだな、と思った。余程、信頼が厚いに違いない。
 夜は警戒を厳しくして、小舟で南海丸の回りをまわらせた。
 朝、陸風が吹き始めると、すぐ出帆した。六条の院も、毛利方から南海丸の情報を得ているに違いない。恐らく、こちらに向かっていることだろう。沖に出ると、南風を左真横から受けた。海龍丸とは前から吹き付ける西風の中で出会いたくない。いつ、風向きが変るか分からないので、なるべく苦労してでも、南の有利な位置で戦いたい。それで、南西方向に進んだ。沿岸から離れることになるが、致し方ない。
 昼過ぎ、見張り台から声が上がった。
 「右舷前方に船はっけーん」
 船内が一瞬、ざわめいた。いま、この時間にあの船以外にこの海域にいるはずがない。
 「いよいよだな」
 六兵衛が言った。
 「そうだな。いよいよきゃつらを海に葬るときがきた」
 「このままでは、まともにぶつかる以外ないな」
 「そやけど、相手には沈んでもらわないとな、一緒に沈むわけにはいかんからな」
 「はははは、そら、そうや」
 「それで、このまま行けば、右舷の大砲が最初にぶっ放すことになるんやが、一つ、試したいことがあるんや」
 「それって?」
 「うん、大砲の一つだけ、熱く熱した弾を詰めて撃ってやろうと思っている」
 「で、どうなる?」
 「その弾が船の外板を貫いて、中に入れば火事を引き起こす。火薬に当たれば爆発を起こすだろう」
 「そりゃそうだ」
 「小見の公秀殿に、エウロペの海岸の砦の大砲は、弾を熱していると、聞いたことがある」
 「じゃあ、やってみるか。でも、扱いは慎重にしないと、自分の船を火事にしてしまうことになる」
 「あははは、そうだな」

 「戦闘準備!」
 太鼓がどどーんと、打ち鳴らされた。乗り組みの者全員が一斉に動いた。
 助左衛門は右舷大砲組頭の吉野東風斎を呼んで、策を授けた。東風斎は最初はびっくり顔だったが、すぐ呑み込んで、配下の者に準備させた。
 船内全員が武装し、持ち場に付いた。
                   (続く)




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